採血不要で血糖値が測れる機器が発売されますよ
ちゃおしこ!
カルロ・クマです。
糖尿病患者にとって、日々の血糖値測定は大変ストレスのかかる作業です。
いくら微量とはいえ、指先に針を刺し、血液をしぼりだした上で、センサーにセットして計測する……いくら機器が進歩して、短時間で計測できるようになったとはいえ、患者にとって負担であることにかわりはありません。

そんな面倒な血糖値測定が楽に、そして誰にでも簡単にできるような方式が発明され、いまやそれを製品化する段階まで来ていることはご存じでしょうか。
今回は、そんな遠くない将来市販される、痛くない次世代の血糖値測定機についてご紹介したいと思います。

従来の血糖値測定
これまでの血糖値の測定は、冒頭でも述べた通り『採血』しなければ、測定することができませんでした。
採血をするということは当然、身体に多少なりとも針を刺す必要があり、そして小さいながらも痛みがあり、針を刺せば当然傷がつきます。
たった一度の採血では、大したことはありませんが、糖尿病というのはご存じの通り、治らない病気ですから、定期的かつ高頻度で血液中の血糖値を測る必要があるため、何度も上記のような『嫌な思い』をせねばなりせん。
もちろん、インシュリンによって、血糖値を下げる処置を受けている方は、逆に低血糖の症状(血糖値が下がることによって、不快な症状が出ることはもちろん。判断力が低下したり、最悪の場合気を失ってしまう)が出てしまうのを避けるため、血糖値測定は絶対必須です。
新しい方法では、そんな患者にとって負担だった血糖値測定が大きく変わります。
新しい血糖値測定の方法とは
新しい血糖値測定では、針は一切使いません。
代わりに利用されるのが、光や高周波を使った非侵襲(針を刺さない)的な血糖値測定法。
いずれも、実際の血液に触れずに、血液中のグルコース(ブドウ糖)量を計測(推定)します。
簡単に言えば、光や高周波の反射や透過によって得られた情報(グルコースの性質によって反応する条件)を基に血糖値を測定(推定)するテクノロジーだと思ってください。
詳細な原理についてお知りになりたい方は、文部科学省の『第3章 健康なくらしに寄与する光 3 光を用いた非侵襲生体診断』を参照してください。3-9に、『非侵襲血糖値測定』の解説があります。
非侵襲型の血糖値測器が実現すると何がスゴいのか?
従来の採血型の血糖測定器と比べて、非侵襲型の血糖値測器には次のような8つのメリットがあります。
- 痛い思いをしなくていい
- 傷が出来ない
- 安全
- 経済的
- ゴミが出ない
- 場所を選ばない
- 測定の頻度を増やすことができる
- 誰にでも使える
痛い思いをしなくていい
これは言うまでもありませんね。
従来のような採血が不要なので、ランセット(穿刺器=せんしき)で指先に針で穴を開ける必要がありません。
従って、痛みは全くありません。
傷が出来ない
上記同様です。一回の針の穴は微々たるものですが、何度も採血していると指先がポツポツの傷だらけになっていくんですよね。
男性はあまり気にしないとしても、女性はやはり手を綺麗に保ちたいものですよね。
安全
小さな針で開ける穴とはいえ、穴は穴です。
皮膚の一部に穴が開くわけですから、菌などが入るリスクは全くのゼロではありません。
このリスクも、針を使わない血糖値測定ができることで、回避できるようになります。
経済的
採血の必要が無くなるので、血糖値測定の度に必要だった、『針』『センサーチップ』『洗浄綿』といった消耗品が一切不要になります。
もちろん、導入開始時のランセットもいりません。
血糖測定に掛かっていた、これまでのコストとは比較にならないほど経済的です。
最初に測定器を買ったら、あとは何も要りません。
ゴミが出ない
経済的な点でも説明したとおり、消耗品が一切要らなくなるのですから、ゴミが出ません。
特に、採血に使った針やセンサーは『医療廃棄物』になりますので、普通のゴミとして捨てることができずに、病院に持参している方も多いと思います。
非侵襲型の血糖値測定器であれば、そのような面倒な手間も必要なくなります。
場所を選ばない
非侵襲型の血糖値測定器は、採血の必要ありませんので、周りの人目を気にしたり、一定のスペースを必要としたりということがありません。
いつでも、どこでも、思い立った時に血糖値の測定をすることができます。
測定の頻度を増やすことができる
上記のように、心理的・肉体的にストレスがなく、経済的で、なおかついつでも計測できる利便性があるので、結果的に測定回数が増えるのは自明の理です。
測定回数が増えれば、日々の血糖値管理において、大変なメリットになります(測定する回数が多ければ、自分の糖尿病の状態を今よりも、もっと正確に捉えられる)
誰にでも使える
非侵襲型の血糖値測定器は、採血を必要としないので、小さな子供から、お年寄りまで誰にでも扱えます。
もちろん、針を刺すような心理的なハードルもないので、自分が糖尿病だと気づいていない人も気軽に使うことができ、糖尿病の早期発見にも役立つでしょう。
糖尿病の予備軍を含めると、日本人の6人に1人が糖尿病です。簡単に、気軽に血糖値が測れることで予防ができるようになれば、重症化することもなくなるので、間接的には糖尿病に対する医療政策としても、大きなメリットがあるのではないでしょうか。
非侵襲型の血糖値測定器を開発しているのは、AapleとMediWiSeほか
非侵襲型の血糖値測定器は、現在複数の企業で開発・研究が進められています。
私が注目しているのは、アップルとメディワイズの2社です。
Apple Watch
アップルでは現在、Apple Watchに搭載すべく、研究・開発を進めていると先日、一部情報がありました。
米Appleには、バイオメディカル(生物医学)の専門家で構成する秘密のチームがあり、そこで血糖値測定センサーを開発していると、複数の米メディア(CNBC、The Verge、Mac Rumors)が現地時間2017年4月12日までに報じた。もしプロジェクトが成功すれば、数多くの糖尿病患者の助けになるほか、Apple Watchが必携品になるという。
報道によると、Appleは、非侵襲的(生体を傷つけない)方法で血糖値を測定する技術を開発している。これは光を皮膚に透過させ、血液内のグルコースレベルを、患者に痛みを与えることなく継続的に測るというもの。このバイオメディカルチームは、Appleの極秘プロジェクトの一部であり、故Steve Jobs氏が最高経営責任者(CEO)時代に着想されたものという。
こちらは光を用いた測定方法を採用しているようです。
極秘プロジェクトなのに、外部に漏れたのかよ! とか突っ込みを入れたいところですが、マーケティング的な大人の事情というやつでしょう(笑)
GlucoWise
一方のメディワイズ社は、健康問題をターゲットにしたソリューションを開発する、イギリスのスタートアップです。
こちらが開発している『GlucoWise(グルコワイズ)』は高周波電波で測定するタイプ。
GlucoWiseは手の親指と人差し指の間に押さえつけて使う。針を刺して採血する代わりに、高周波電波を使って血糖値(グルコース)を測定する。
親指と人差し指の付け根で測定するのは、その部分は厚みがないから。そして測定の際は、ナノ粒子フィルムを活用したセンサーで、電波が皮膚組織を通過しやすいようにしているのだという。
測定にかかる時間は10秒以下、毛細血管レベルで血中グルコース濃度を測ることが可能とのこと。
引用:糖尿病患者必見!手にあてるだけの血糖値測定デバイス「GlucoWise」が開発中 | Techable(テッカブル)
そして、こちらは極秘プロジェクトとしてベールに包まれたアップルと違い、実際に製品画像も公式ページ上に掲載されています。
引用:GlucoWise™ : Meet the new non-invasive glucose monitor that helps you take control of your life
そして、臨床試験が完了次第、購入ができるとのことで、2018年後半に予約注文の開始を目指していたのですが、2019年2月現在まだ発売に至っていません。
公式ページ:GlucoWise
ライトタッチテクノロジー株式会社
量子科学技術研究開発機構の第一号ベンチャー『ライトタッチテクノロジー株式会社』も最先端のレーザー技術を利用した非侵襲型の血糖値測定センサーを開発中です。
固体レーザーの最先端技術と光パラメトリック発振(OPO)技術2)を融合することにより、世界で初めて手のひらサイズの高輝度中赤外レーザーの開発に成功し、一定の条件の下、国際標準化機構(ISO)3)が定める測定精度(血糖値75mg/dl未満では±15mg/dl以内、75mg/dl以上では±20%以内に測定値の95%以上が入っていれば合格)を満たす非侵襲血糖測定技術を初めて確立しました。
一定の条件の下で承認医療機器に求められる国際標準化機構(ISO)が定める臨床応用に必要な測定精度を満たす非侵襲血糖測定技術を初めて確立しました
引用:量子科学技術研究開発機構
2021年度の実用化を目指しているそうです。
公式ページ:ライトタッチテクノロジー株式会社
その他の参入予定企業
他にも複数の企業が、血糖値測定器の開発に動いているようです。先のITproからの引用です。
こうした分野の開発を手がけるテクノロジー企業はAppleだけでないとCNBCは伝えている。米Googleの持ち株会社である米Alphabetの子会社、Verily Life Sciencesは血糖値を測定するコンタクトレンズを研究しているほか、米医療機器メーカーのDexComと協力し、小型の血糖値測定器を開発している。
これらの企業の中で一番、製品化が早いのは一体どこでしょうか。実際に製品のフォルムを発表している『GlucoWise』が一歩リードといったところでしょうか。
他の企業から、緊急発表———ということも、あり得ない話ではありません。
我々、ユーザーとしては、一日も早く発売を望みたいところです。
待ち遠しい一般販売
現在、開発段階にあるこれらの血糖側的は、製造コスト・大きさ・医療規制の対処などがクリアできれば、順次発売されていくことが予想されます。
針も刺さずに、痛い思いをせず、血糖値が測れる時代が来るなんて、糖尿病にとって本当に良い時代になりましたね(糖尿病に関する、これまでの誤った情報が逐次訂正されていっていることも!)
今回の採血の必要のない血糖値測定器ですが、モノは出来ても認可が降りずに、市販されないとか、病院に行かなければ結局は買えないなどという、つまらん利権おじさんたちの嫌がらせにあわずに、無事一般製品化に漕ぎつけて欲しいと願っています。
現在の、『血糖値測定に必要なセンサーチップを病院で囲い込んでいる』という状況をみると、非常に心配……。ま、そうなったらなったで、しょうがないのでeBayで買いますけどね(笑)
てなわけで、近いうちに針を使わない血糖値測定器が発売されるよーって話でした ฅʕ•ᴥ•ʔฅ
ちゃおしこ!
